冷たい太陽と熱い月


暗い空からそっと差し出された二つの光
明るい空からなら気付けなかった二つの光
大きさの違う二つの光は私の手の中
握り締めていなければすぐにどこかへ行ってしまう

一つの光に気を取られている間にもう一つの光は明るい空へ
手の中に残っている光を抱きしめながら空を見る
他の光にあふれた空の中 どこ?

まぎれてしまった光のことを気にしながら 一つの光を抱いて眠る
輝きを増していく光に包まれ ここに安らぎを
光の色が変わるのを飽きずに眺めていた
私から光が消えていくことに気付かずに
暗い空があの光を差し出していることにも気付かずに

明るい空の下 私の光が消えた 安らぎと一緒に
暗い空はもういない 光をくれる空はいない
逃げた光を暗い空が捕まえたことを知らずに逃げた光を探す
何もない空の中を探す もう手に入らない光

あの安らぎは嘘のように消えた
逃がした光が逆でも結果は同じ
何かを得るための犠牲 犠牲があっての何か

何が欲しい? 何を犠牲にする?
同じ強さで光る光はない どちらかは強く どちらかは弱く
犠牲を払ってまで欲しいのは何?

決められずに一つの光も持てない今は霞んだ空の下
犠牲を払ってまで欲しいのは何?


「existence − 心の鎖 −」より (C)美琴